2016年5月14日土曜日

中学校課題曲、ポピュラー音楽編曲そして演奏のあり方 (教育音楽 中学・高校版 2016年4月号・掲載)

 以下は、「教育音楽 中学・高校版 20164月号」に掲載された文章です。

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編曲者の言葉
中学校課題曲、ポピュラー音楽編曲そして演奏のあり方
佐藤賢太郎
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 中学校の部は、通常の合唱部のほか、授業や学年活動の延長、有志を募った即席合唱団で参加する団の数が他部門より多く、加えて課題曲を学校・学年歌として取り組む学校も多いというのが現状です。「時間をかけて合唱に取り組んだり、声作りをしていない生徒によって歌われる可能性が他部門より多い楽曲」となっている課題曲がもつ現状を踏まえ、まず、声作りに時間がかけられない団にやはり高音は厳しいということから、今回の課題曲は過去の課題曲と比べて声域は狭く、最高音を低く設定してあります。また中学部門は、男女数の想定が難しく男声が非常に少ない団から、学年全体で歌う男女比が平等なのに混声三部で男声が一パートに集中する、といったバランスが悪い状態で演奏を行うことも多いため、今回の楽曲は男声の人数に関係なく演奏できるようにも努めました。
 中学課題曲のねらいは「多くの中学生が自ら合唱に興味を持ち、歌いたいと思える曲を」であり、ポピュラー音楽という最も身近なアーティストによる楽曲提供が続いている中学課題曲は多くの生徒が合唱に興味を持つきっかけとなっているでしょう。しかし「ポピュラー音楽の合唱編曲と演奏のあり方」に戸惑いを感じる指導現場の声があることも事実です。今回の編曲の基本方針は、「ポピュラー音楽であることを十分に生かす」でした。ポピュラー音楽は、一本の旋律の表情豊かな演奏と歌詞が内容の全て、といっても過言ではないため、合唱版もまずユニゾン、そしてホモフォニックな構成で旋律と歌詞を明瞭に歌い上げられる作りとし、楽曲指示は楽想というよりmiwaさんの想いを鑑みた歌詞に対する「ト書き」として、外国語ではなく日本語で書きました。楽曲は歌詞により近づいた構成とし、伴奏も生徒が弾くことも考慮した難度で素敵なものになるように努めました。演奏に関してですが、多くの指導者にとってポピュラー音楽の合唱が「普通の合唱曲」と比べ難しいと感じる理由のほとんどは「スタイル」というものに集約されます。ポピュラー音楽は、ジャズやゴスペル等と同じく演奏の本質は口伝であり、真似であり、音符への自由なアプローチにあります。それらは本質的に「楽譜に書かれない」もので、知っていなければ教えることができないものです。授業活動に加え、課題活動を指導する先生方には大変かと存じますが、本書を手にする熱心な先生方には、自らの生涯学習の一環としてもポピュラー音楽演奏を研究してほしく思います。
 さて私の課題曲制作の方針をまとめると、様々な状況の合唱団にとって取り組み易いものにすると共に、課題曲演奏でポピュラー音楽の演奏スタイルに挑戦する団体を増やす道筋を作るというものでした。今後の課題として、ポピュラー音楽合唱演奏を技術的にどのように対処すべきか、ということについて具体的な啓蒙をしなければいけない、と感じる次第です。
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 出版上の文字制限があり、私の中でかなり省略してしまった感が残っていたので加筆修正してから掲載しようかと思っていましたが、とりあえず現状のものを掲載することいたしました。



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