2010年8月3日火曜日

コル・レーニョ

 オーケストラの弦楽器の奏法に「col legno(コル・レーニョ)」というのがあります。これは、「弦を弓の木の部分で叩いて音を出す」奏法で、通常の「弦を弓の毛の部分でこすって音を出す」ものとは違い、叩くノイズが虫のように入った特別な音になります。

 さて、このコル・レーニョですが、弓が傷つく可能性があるので、弦奏者には敬遠される奏法です。良い弓は、良い楽器と同じくらい高価なので、私も、コル・レーニョは、なるべくピアノかそれより弱い音量の所でしか指定しないようにしています。

  ですが、映像のための音楽、特にホラーやミステリーのシーンには、強いコルレーニョがどうしても必要なときが出てきます。さて、そのような音楽があるオー ケストラ録音の際には、私は必ず、「未使用の鉛筆」をたくさん持っていって、バイオリンやビオラ奏者には弓の代わりに鉛筆で弦を叩くように頼んでいます。 初めての一緒になる奏者は、「え?」という顔をしますが、実際のところ、小さい鉛筆は弓よりもコントロールしやすく、弓のときとは違い、奏者も思い切り良 く鉛筆で弦を叩いてくれるので、結果として、弓を使うよりも鉛筆の方が良いコルレーニョの音が出ます(笑)。チェロやベースは鉛筆だと軽すぎるので、太目 の油性マジック等を使ってもらいます。

 もちろん、これは録音セッションだから可能なことで、コンサートでこれをやったら、冗談になってしまうでしょう。ということで、私は常々、弦楽器製作者が立派なコンサート用鉛筆やコンサート用油性マジックを製作してくれたらいいのになー、と思っています(笑)。

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